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2008年2月

鬼太郎おばさん

…デビューしたてー若葉マークの頃ー2006年…

 「いつもそこで匂い嗅いでるのねぇ」
 私とホーリーが歩いているエリアでは、ほとんどの側溝に蓋がしてあります。
おばさんの言う「そこ」とは、掃除のためスチールで作られた格子状の蓋が使われている
場所。まさに臭いの交差点でした。

ホーリーに匂い嗅ぎをされて困るのは、信仰方向と違う方へ行ってしまうこと。
避けなければいけない障害物にも、気が散っているためぶつかりそうになること。
その臭いがペットの排泄臭なら、ホーリーも誘われて排泄ダンス!ウンチだオシッコだと、
新米ユーザーの私は大あわて。

 もう一つのクンクン理由は、落ちているおいしい物。
ある日のこと、{何か食べたな!?}と、怪しげな動きに手を彼の口に持っていくと、
私の手に触れたのは、一束になったブニョっとした物!!「ゲッ」と思わず声が漏れ、
慌てて手を引いた物の正体は…?

もちろん、見えれば事前に防げる拾い食い。間に合わなくても正体は判る。
未確認物体との接触ってけっこう怖いです。
でも、そのままにしておけば当然食べちゃう。まだ正体は不明だったけど、とにかく、
ホーリーの口から謎の物体を取り出したのでした。あ~ぁ、怖かった!!(号泣)

ビクビクしながらエイヤッで取り出した物、それは、なんとイカのゲソ!(涙)
常備携帯のゴミ袋に入れながら、{何でこんな物が落ちてるの~!}と怒り、次に
{落とした人は無念だったろうなぁ~!}と、ほとんど原型を残していたゲソに、
落とし主の心中を察した私でした。(トリップ)

そんなですから、すれ違う人に、「エサはあげてるんですか?」と問われ、
「ずいぶんキョロキョロする犬ですね」と嫌みを言われ、息子の素行に、
ママちゃんは恥じ入っていたんですよ、ホーリー君。
まぁ、そんなこんなでオラが町にやって来た盲導犬は、別の意味でも有名でした。(涙)

 {いつも?}。おばさんに声を掛けられたのは初めてだったけど、
きっと、私たちの様子を、どこかで見ていてくれたんでしょうね。その一言に感動。
人が大好きなホーリーは、視線が合ったおばさんに尻尾をブンブン振って
愛嬌を振りまいています。あっ、これって、おばさんに見られたくない場面を見られてた
ってこと?ホーリー君、愛嬌なんて振りまいてる場合ではないんですよ!(号泣)

 ところがです。翌日、同じ道を通っても、いつものようにホーリー君、
グレーチングの臭い嗅ぎに行きません!!{あれっ、変だなぁ?}
(注・あっ、グレーチングって交差点の蓋のことです。)
翌日も、そのまた翌日も、臭い嗅ぎに行かないんです。(バンザーイ)

思うに、いけないことをタイミングよく、訓練士がビシッと叱れるように、
あの日のおばさんの一言は、ホーリーの頭に、「してはいけないこと」として、
しっかりビシッとインプットされたのかも?本当に、あれから今日まで、
問題の場所でのクンクンを、彼は全くしないんですから!他ではしてますけどね。(涙)

 おばさんは、その後もときどき現れて、道路を渡らせてくれたり、
ゴミ収集場所に突進しそうなホーリーを笑って注意してくれたり、
「おはよーう」と、挨拶してくれるのでした。

でもね、とっても不思議なんですが、おばさんが現れる時は、
いつも下駄の音がして、しかもカランコロンと言うその音は、
突然聞こえてくるんです。(と、当時の私は思っていました)
なんせあの頃は、歩くだけで精一杯で、なーんにも感じなかったけど、
おばさん、本当にいたんでしょうか?
だってね、おばさんが現れていた付近をホーリーが上手に歩けるようになった頃から、
下駄の音がちっとも聞こえなくなり、おばさんとも会ってないんです!(ゾーッ)

 見えないから判らないけど、おばさんは最初からいなくて、本当は、声だけで
姿がない、例えば困った時に現れるゲゲゲの鬼太郎のような人だったんじゃないのかな?
鬼太郎を呼ぶには、妖怪ポストに手紙を入れないとダメなんだけど、私もホーリーも、
それがどこにあるか知らなかったし…。気を効かせて…、と言うことで。(汗)
ゲタの音で人が近づいていることを私に教え、ホーリーを訓練しに来てくれたのかも?
と、私は一人でドラマチックに想像していたのでした。(感謝)

 家族にこんな話をしたら、「おばさん、ゲタを靴に替えたんじゃないの?」
「仕事中の盲導犬に話しかけちゃいけないって、誰かに聞いたんじゃないの?」と、
きわめて現実的な意見が返ってきました。まぁ、その方が説得力はあるけど…。

{そうなんだろうなぁ}~と思いつつ、私の中のおばさんは、ゲタをカラーンコローンと
やってくる鬼太郎のような人。鬼太郎おばさん。

でも、もしかしたら、ゲタは靴になり、仕事中だからと声も掛けないけど、今もどこかで
私たちを見守っていてくれるのかも…。
だって、とっても ふ・し・ぎ !!なんだもん。

<しゅくだい>

1.Stop the 臭い嗅ぎ!

2.Stop the 拾い食い!

3.鬼太郎おばさんはどこに?

4.見えない人にとっての足音は、助っ人が来る合図

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四日で終わった極秘練習!(その2)

 駅近くの音響信号が朝8時から鳴ると知った晩、
 「暑いんだから、ちょうど音が鳴る頃、そこを通れるように家を出れば」と母。
早朝の涼しさはないけど、背に腹は替えられぬ。翌日、早速実行。

駅へ急ぐ自転車が、交差点を渡る私たちの前を、
ものすごいスピードで横切って行く。{えっ、自転車って右側通行だったっけ?}
ぶつからずすり抜ける自信があるんだろうけど、右に左に蛇行運転当たり前、
歩行者が止まって当たり前。歩道をビュンビュン、側溝の上をガタガタ言わせ
走り抜ける自転車に、音に敏感なホーリーが飛び上がる!

盲導犬との歩行は左側通行が原則。なのに、何で自転車が前から来て、
ホーリーの脇を通るんですか?クレイジー!怖くて怖くて歩けません。

 翌日は、更に時間を遅らせ出発。音響信号は鳴ってたけど、
今度は通学を急ぐ高校生が、信号を無視して渡って来ます。
前日は、朝練に急ぐ高校生のアクロバット走行に恐怖し、
その日は、遅刻ギリギリの登校模様が更にプラス。ここでも歩道を車道を
縦横無尽に走る走る!私たち、どっちにしても怖いんです!(涙)

 と言う訳で、初心者マークの私たちが、まず心に留めておかなければいけないことは、恥を掻くことでも人の思惑でもなく、困ったときに手を貸してくれる援助者がいること。自分でも安全に歩ける時間帯や道路の情報を把握していることでした。
良いところを見せようと、人知れずコソッとやったつもりの極秘練習は、
見えない現実の前に、あえなく四日で終わり、私たちは、町が落ち着く時間帯、
ギラギラ照りつける太陽の下、四日前と同じように、また歩き続けるのでした。(号泣)

<しゅくだい>

1.美化され過ぎる盲導犬

2.ペットの排泄

3.音響信号機と歩行者用押しボタン式信号機

4.自転車の走行ルールとマナー

5.援助者のまなざしは大切

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四日で終わった極秘練習!(その1)

・・・デビューしたてー若葉マークの頃ー2006年・・・

 「お利口ねぇ」「偉いわねぇ」
初めて盲導犬を見た人は、必ずこう言って傍らにいるホーリーを褒めてくれます。
嬉しいけど実は汗!

段差や障害物が怖くて、どうしてもホーリーの歩くスピードについていけない私。
ついついハーネスを引き、スピードをセーブ。そのせいでホーリーのやる気が後退。
結果、匂い嗅ぎや拾い食いをするゆとりを作ってしまいました。(涙)
その行動は、盲導犬と歩くユーザーに危険であるばかりか、
場合によっては、犬にとっても命に関わる重大事。

そんな現場を見た人から、鋭い言葉が飛んできます。
「ずいぶんキョロキョロする犬ですね」「エサあげてるんですか?」。
ホーリーを庇いたくても、いちいち言い訳はできないし、目の前で起きたことは全て現実。隠しようがありません。

 道行く人の盲導犬へのイメージは、お利口で偉いスーパードッグ。
私も、ずっとずっとそう思っていました。(汗)
やっと出会えたホーリーです。私だって称賛に値する盲導犬であってほしい。
ここはこっそり、人けのないところで練習するしかない。
決意を固めた私は、恥と人目を気にする、正真正銘の日本人です。(汗)

 で、時は7月。早起きすれば涼しいし、裏の方を歩くことにしました。
新しい道に好奇心いっぱいのホーリーは、これまた教えるべき角をドンドン飛ばし、
私たちは迷子に・道を教えてもらいたくても人の気配はなく、足音も聞こえません。
だって、気持ちは「人知れず練習」してるんだもん!!。

イヤ、いたかも知れないけど、早朝、犬と並び、ただただそこに立ち、
足音が近づくのを待っている姿は、遠目にも怪しく、
意識して避けられていたのかも…。(号泣)

 少しは人がいるだろうと、夕方、涼しくなってまた裏の方へ。
いました。いました。犬の散歩ラッシュ!!。ペットの排泄匂に刺激され、
出がけにしたのに彼もオシッコを!。あ~ぁ、ダメ!!。道は聞けるけど、
盲導犬としてのマナーが…。それに、犬にも気を取られてる…。(涙)
と言うことで、朝も夕方も裏はダメ。

 翌日は、少し慣れた駅の方へ。通勤には早すぎて人がいない。
でも大丈夫。この道なら、私たちだけで何とかなるもん!
あ~ぁ、音響信号が鳴ってない!これじゃ道路が渡れない!!。(涙)

ホーリーが信号の色を判断し、右見て左見て渡っている訳じゃないんです。
私の耳で車音を判断。エイッヤーッと勘を頼りに渡って、
事故に遭ったら目撃者は言うでしょう。「信号は赤だったのにねぇ!」(号泣)

「いたなら教えてよ」と言いたいけど、そんな場面をたまたま見ていたお豆腐屋のご主人、
「ワンちゃん、たいしたもんだねぇ~。ちゃんと赤で止まってるんだから」。
ブー、少し違いま~す。ホーリーは信号で止まったんじゃなくて、
車道に降りる段差で止まったんです。それだけで充分偉いけど、
道路の横断は、「音響信号命」なんです。

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ご・あ・い・さ・つ

ごあいさつ。2008.02.09

 私はマナティー。見えない歴10年目の中途視覚障碍者です。
盲導犬ホーリーと歩き始めてもうすぐ3年。
これから綴るお話しは、見えなくなってから、一人で一度も外出したことのない私と、
盲導犬ホーリーが、毎日毎日、悪戦苦闘しながら歩く中、
触れあったたくさんの人たちとのエピソード。本当にあったお話です。
汗と涙とお笑いの、恥かきながらのお散歩日記!!。

若葉マークの盲導犬ホーリーの成長と
目の見えないマナティーが、見ている事や物や者を、
文字だけの世界から感じ取ってもらえたら…。

みなさんに見えなかった何かが、見えてくるようなブログを目指して!
さぁ、私たちと一緒に歩いて下さい。

 文の最後に<しゅくだい>コーナーがあります。
一緒に考えて、クリアーして行けたらいいなぁ~。

(お願い 誤字があったら教えて下さい。ペコリ)
2009年02月 マナティー

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